林業の仕事

林業の仕事

取材協力黒滝村森林組合

林業の仕事
林業は、苗木を植え、木を育て、最終的に伐採ばっさいして木材を生産する仕事です。
林業は大まかに、植林、下刈したがり、作業道づくり、枝打ち、除伐じょばつ間伐かんばつ、搬出という作業があります。ほかにも、植林の前には、「ごしらえ」という作業や、雪の多い地域では、雪で押されて倒れた若い木を起こす「木起きおこし」という作業もあります。
苗木を植えた後、5年くらい下草を刈り、その後、数年かけて枝を落とします。間伐かんばつという抜き切りを何度も繰り返し、大きく育った木を伐採ばっさいして搬出します。

林業の流れ

工程1 植林
まずは計画された土地に苗木を植えていきます。スギやヒノキは主に3月4月ごろに植林します。
苗木を植える前に「ごしらえ」という作業があります。これは、伐採ばっさい作業を終えた場所に残された木の先端部や枝、刈り取った低木や雑草などを、植栽しやすいように片付けたり、整理、集積したりする作業です。
吉野地域の植林は他の地域より密に植栽しています。おおよそ1m間隔で1人1日あたり400本くらい、最終的には1haあたり5000本から1万本くらいを植えていきます。密植みっしょくによってまっすぐ上に伸びた目の細かい木が育ちます。
植林をするときには、山の地形やもともと植わっていた木を見ながら、どこがスギまたはヒノキに適しているかを判断します。スギやヒノキによって適した土地は違うからです。スギは肥えている土と水を好み、ヒノキは尾根筋おねすじなど痩せ地であっても適応できるのです。
  • 林業の流れ 植林
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工程2 下刈したが
次は下刈したがりを行います。植えた苗木がまわりの草木に覆われ枯れるのを防ぐために草刈り機や鎌で刈り取り除去します。栄養分と日当たりを確保することが目的です。また、夏場は湿気がこもって植えた苗木が腐ってしまう「れ」の原因になるため、風通しをよくするためにも草刈りを行います。
8月~9月ごろに1回で刈ってしまう場合もありますが、れを防ぐために夏と秋の年2回下刈したがりを行うこともあります。
下刈したがりをするときに、一番気をつけなければならないのは、植えた苗木を傷付けないことです。慎重に作業を行います。
  • 林業の流れ 下刈り
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工程3 作業道づくり
次に、搬出のコストをできるだけ抑え、作業を効率よく行うために作業道づくりを行います。
最初はどこに道を作るかを決めていきます。どこに道を作るかを判断するのは難しく、山の地形を把握し、かなり先の道筋まで見通す必要があります。
道筋(路線)が決まったら、障害物となる木を倒して取り除き、地面に残った根を抜いてから土を盛り、荒道あらみちを入れます。その後、盛り土を安定させるために路肩に丸太組をして、上から土を盛って完成です。また、山から流れてくる水や路面を流れる水を排水するため、路面にゴム板を横断させて取り付けます。この排水処理は、道を長持ちさせるためにも重要な作業です。このような方法で作られた作業道を「奈良型作業道」といい、大阪の林業家が確立した「大橋式作業道」を元に、40〜50年前に奈良県で改良され、県内の多くの山で採用されています。
作業道は、基幹となる本線を作ることが重要です。これができれば、間伐かんばつする時に、その場所に向かって支線しせんを作るだけでよく、木を育てることに集中できます。何十年とかけて木を育てる林業においては、この基幹となる作業道づくりが作業の効率化に貢献します。
  • 林業の流れ 作業道づくり
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  • 林業の流れ 作業道づくり
  • 林業の流れ 作業道づくり
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工程4 枝打ち・除伐じょばつ
ふしのないきれいな木目もくめの木を育てるために枝打ちを行います。また、育成する木を守るために、生育が悪かったり、曲がったり、枯れた木を除伐じょばつします。
枝打ちは10月以降、11月から2月の冬場、木の成長がほぼ止まっているときに行います。切り口が傷んだり腐ったりしにくく、虫も入りにくいためです。まず枝の付け根の下側に切り込みを入れてから、上から枝を切り落とします。次に切った断面をきれいにします。断面がきれいなほうが、すぐヤニで包まれ抗菌されるからです。
樹齢10年を過ぎたら1回目の枝打ちを行います。この時期の枝打ちを「紐打ひもうち」とも呼んでいます。2回目の枝打ちは15〜20年目くらい、その後、数十年かけて合計4回ほど行います。
  • 林業の流れ 枝打ち・除伐
  • 林業の流れ 枝打ち・除伐
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  • 林業の流れ 枝打ち・除伐
  • 林業の流れ 枝打ち・除伐
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工程5 間伐かんばつ
次に間伐かんばつを行います。間伐かんばつとは、立木の成長や森林全体のバランスを見ながら一部の木をって間引く作業です。間伐かんばつをすることで、木が密集せず、山に光が差し込み、木々の成長を促します。
梅雨明けまでは虫が多く腐りやすいため、主に秋頃から行います。木材市場などに出荷する利用間伐かんばつでも7月以降から行うことが多いです。全体の20%~30%くらいの木を間伐かんばつします。
適時適量の間伐かんばつを行うと、年輪の間隔がそろい、木目もくめの美しい木に育ちます。間伐かんばつの時期が適切でないと、木目もくめが詰まったり、広がったりしてしまいます。木の成長を見ながら何回も間伐かんばつを繰り返す吉野林業では木目もくめのそろった通直つうちょくで美しい木が育ちます。
  • 林業の流れ 間伐
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  • 林業の流れ 間伐
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工程6 杉皮むき
杉の木を伐採ばっさいした際、その樹皮をむくことがあります。これを杉皮むきといいます。杉皮は、社寺建築の屋根などに用いられる「杉皮葺すぎかわぶき」の材料や、建物の壁や天井の装飾などに使われます。
杉皮むきは、山で行います。木の水分が多いときに皮をむかないと、きれいな杉皮が取れないため、木が一番水を吸い上げている7月の土用の時期に作業をします。80年生から90年生くらいの木から良い杉皮が取れます。
皮をむくときは、木の枝で作った道具を使います。まず、刃物で縦に筋を入れ、割れ目に木の枝を差し込みます。枝のカーブがちょうど木の丸みに沿い、するすると皮がむけていきます。
った木の皮をむいた後、丸太を切り分けず枝葉をつけたままの状態で一定期間、現場に放置し、水分やアクを出してしまいます。これを「葉枯はがらし」といいます。葉枯はがらしをすると、木の色がきれいな色になり、虫がつきにくくなります。
  • 林業の流れ 杉皮むき
  • 林業の流れ 杉皮むき
  • 林業の流れ 杉皮むき
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工程7 搬出
最後は、った丸太を山から運び出す搬出作業です。梅雨の時期に木をると、木の表面に傷がつきやすいため、秋以降の作業が中心となります。
ヘリコプターで出したり、ウィンチで出したり、ワイヤーロープ(架線かせん)で出したりと、いろいろな搬出方法があります。
ヘリコプターはコストがかかりますが、現場からそのまま吊り上げて出せるため、木が傷まず品質を保てるというメリットがあります。また、6m〜8mといった長い丸太を搬出することも可能です。 ウィンチの場合は、作業道まで引きずって運ぶため、木が傷つかないよう気をつけます。また、残った木を傷つけないよう倒し方も工夫します。
搬出作業で一番大切なことは、職人の安全を確保し、木材の品質を損なわないように運び出すことです。
  • 林業の流れ 搬出
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インタビュー

黒滝村森林組合
職人さん
林業の仕事 インタビュー
  • 日々の仕事の中で、やりがいや喜びを感じる瞬間はどんなときですか?
  • 谷本さん大人数で3人1組でで仕事をした際に、伐採ばっさい等でうまくいったときに喜びややりがいを感じます。
  • 安崎さん毎日新しいことの連続で、勉強になることが多いのが楽しいです。
  • 澤山さん大径木たいけいぼくったとき、自分が狙ったところにちゃんと倒れたときに、喜びとやりがいを感じます。
  • 逆に、どんなときに難しさや大変さを感じますか?
  • 谷本さんまだ林業を始めてまだ間もないですので、難しい仕事であったりとか、自分のスキル以上の仕事がくると、難しさであったり、そういったものを感じます。
  • 安崎さん先ほどと同じで、毎日新しいことの連続なので、覚えることが多いのが大変です。
  • 澤山さんやっぱり気候ですね。雪が降ったり、大分ここらも雪が積りますので、そういうときに足元が滑ったり寒かったり。夏場は涼しくていいんですけど、やっぱり冬場が大変ですね。
  • 林業の仕事 インタビュー
  • 林業の仕事 インタビュー
  • 林業の仕事は社会の中でどのような役割をもっていると感じますか?
  • 澤山さんCO2を削減するということを聞いたので、やっぱり環境に役立っているのかなと思って木をっています。
  • 林業にはどのような可能性があるとお考えですか?
  • 澤山さん最近、若い男女ともが仕事をするようになって。この「自然の中で働くということがいい」ということがわかってきたので、それはとても嬉しいと思います。
  • 吉野材の良さとは何だと思いますか?
  • 澤山さんやっぱり年輪が詰まっていて色も綺麗だし、枝打ちも早くからしてふしのない良い木だと思います。
  • 伐採ばっさいされた木材だけでなく、育てている段階から感じる魅力はありますか?
  • 澤山さん植林はもうしてきたので、それがやっぱり25年、この仕事をして29年になるのですけど、自分が植えた木が材になっていく姿を見ていくと、自分の子どもとまではいかないですが、育てたんやなというか、自然に育っているんですけど、そういう楽しみが出てきましたね。
    吉野の植林は、間隔が90cmと狭く植えていくので、育っていく間にまっすぐ育つようになって、後から間伐かんばつしていって太らせるという吉野独特のやり方が、やっぱり素晴らしいんじゃないでしょうかね。
  • ずばり、林業の魅力とは?
  • 谷本さん先人の方でしたり先輩方が手入れされてきた木を、自分たちが今、仕事で携わらせていただいておりますので、そこに歴史やそういったものに大きな魅力があるのではないかなと思います。
  • 安崎さん山の中にいるので、毎日自然の偉大さを感じられることです。
  • 澤山さん体を動かして汗をかいて、帰ってビールを飲んだり、食べたりする楽しみがありますし、自然の中で働けるというこの環境が、やっぱり都会と違ってすごく良いと思います。

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