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『奈良県フォレスターアカデミー』卒業生に聞く!アカデミーでの学びと働くリアル

2023.11.24(更新日)

『奈良県フォレスターアカデミー』卒業生に聞く!アカデミーでの学びと働くリアル

平成23年(2011年)の紀伊半島大水害では、奈良県において県の南部を中心に広範囲にわたり、大規模な土砂災害が発生し、甚大な被害をもたらしたことから、奈良県では災害に強い森林づくりを模索することになりました。新たな森林環境管理制度を検討していくなかで構想されたのが、森林環境管理を担う人材の養成機関の設立でした。
そして、令和3年(2021年)4月、奈良県吉野町に開校したのが、「奈良県フォレスターアカデミー」(以下アカデミー)です。
アカデミーは、森林環境の維持向上に関する専門的な知識を持ち、それを実践することができる技術と技能を備えた人材の養成を理念とし、林業や森林環境管理に関わる様々なことを学べるカリキュラムがあるのが特徴です。1年制の森林作業員学科、2年制のフォレスター学科の2学科が設置され、フォレスター学科では、市町村に派遣され、長期間同じ地域の森林を管理する「奈良県フォレスター」の候補生である奈良県職員(森林管理職)も一般学生と共に学んでいます。
開校から2年経った令和5年(2023年)3月、フォレスター学科の初めての卒業生が誕生しました。今回は卒業生である奈良県フォレスターの森本 祐太郎さん、吉野中央森林組合の竹家 計さんのお二人を取材し、就業先でどのような業務に携わっているのか、実際の現場に出てどのように感じているのかなど今の状況をお伺いしました。

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右:森本 祐太郎さん 吉野町役場 暮らし環境整備課 農林振興室勤務
左:竹家 計さん 吉野中央森林組合

なぜ、奈良県フォレスターアカデミー(以下、アカデミー)に入学しようと思ったのですか。

森本さん アカデミーに入るまでは、奈良県内の市役所で一般的な事務担当として約12年勤務していました。これからの自身のキャリアは専門性を持って仕事に向き合いたいとの気持ちが芽生えていたときに『奈良県フォレスターアカデミー』募集要項を見つけました。元々登山やロッククライミングが趣味で自然や山に興味関心があったことから、転職を決意し、奈良県の森林管理職(奈良県フォレスター)の採用試験を受けました。研修としてアカデミーで学び始めた時は35歳でした。

竹家さん 前職は畑違いのゲームセンターのスタッフでした。元々林業に興味があったわけではありませんでしたが、学生時代は野球部で、自分には外で動く仕事の方が向いているのではないかと考え始め、農業などの仕事に興味を持っていました。そんなときに目にしたのが、奈良県民だよりに掲載されていた『奈良県フォレスターアカデミー』の入学生募集案内でした。それがきっかけとなり、36歳でアカデミーのフォレスター学科に入学しました。

『奈良県フォレスターアカデミー』で学んだことで印象深いことはありますか。

森本さん 元々、自然環境や山に興味がありましたが、アカデミーでは、まず森林生態等をかなり専門的に学ぶので、いかに自分が森林を抽象的にしか捉えられていなかったのかを思い知りました。それまで知らなかった森や山に関するアカデミックな内容を学べることが楽しく、自分の中で森の解像度が上がっていきました。同じように見える山でも、地域や区域によって何十種類もの樹木の違いがあることに気付かされたり、山の成り立ちによって地質が全く違うことに気付かされたり。地質が違えば自然植生や地形が違い防災的な視点が変わってきます。そういったアカデミックなことを学ぶことが出来たことが特に印象に残っています。また、座学だけでなく、チェーンソーで木を伐ったり、木を運ぶ重機を扱ったり、林業で必要な技術を実践で学ぶことも出来ました。様々な免許を取得するための授業もあり、アカデミーを修了すれば、現場ですぐ活かせる学びがあります。

竹家さん 今考えると、入学した時は森林のことを全く知らなかったと思います。木が山を守り、土を押さえて崩れないようにする。そのような当たり前のことも知らなかったので、アカデミーで学ぶこと全てが新鮮で驚きでした。アカデミーでは、そもそも山とはどういうもので、どんな役割があるのか、基礎的なところから学んでいきます。技術的なことも一つひとつ学んでいきますが、想像以上に座学が多くて大変でした。

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林業に関わる仕事に就いた今、アカデミーで学んだことが、どのように活かされていると思いますか。

森本さん 私は奈良県の職員である「奈良県フォレスター」として自治体に派遣されており、普段は伐採届の受付や地域の森林調査、森林施業等の発注などの業務を担当しています。また、木を伐採することに対する国の補助金の申請受付も行っています。正直なところ、座学で学んだアカデミックな知識はまだそこまで活かせていません。しかし、アカデミーで学んだICTを活用した森林管理は配属後すぐに活用できているように思います。これまで森林の情報は森林組合や地域の精通者から口頭で伝えてもらうことが多かったのですが、アカデミー出身者である私と竹家さんは同じ地図情報ソフトを使えるので、口頭ではなくデータで共有できるようになりました。情報共有のスピード感が上がり、さらに情報をデータで蓄積できるようになった、というメリットもあります。これは、共にアカデミーで学んだからこそ連携できていることだと思います。このような取り組みを続けていけば、地域で一体となって効率よく、森林管理ができると思います。

竹家さん アカデミーを卒業後、森林組合で職を得て、役所との書類のやりとりをしたり、山に入って測量や伐採などを行ったりしています。また、森林所有者の方は森林組合の組合員でもあることが多いので、山に関する相談対応や、役場との橋渡し役をすることも多いです。山の現場に出ることが多いので、機械の操作や選木の知識などはすぐに活かすことができました。森林組合に入っていきなり「木を選木して来て」と言われてもすんなり現場に入ることができたのは、アカデミーで実践的な知識や技術を学んだからだと思います。

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選木作業をする竹家さん

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山林情報をパソコンへ入力する森本さん

2023.11.24(更新日)

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なぜ『フォレスター』という存在が、必要だと思われますか。

森本さん 奈良県の森林は個人が所有している民有林の割合が高いという特徴があります。そうした森林の管理は、個人の資産ですので本来、積極的に行政が手を出すべきものではなく、所有者の意思が尊重されるべきものです。しかし、木材価格の低迷や人口構造の変遷などから、全国的に見ても個人管理が難しい状況になってきています。森林が全く手入れされていないと、例えば台風などで木が倒れ、倒木や土砂が流されると、下流域に住む人々の生活を脅かす危険があります。そのため、行政は公益上、ある程度森林管理に関わる必要があると思います。ただし、行政機関は数年に1回程度の頻度で人事異動があり、一人の担当者が長いスパンで森林を見ることができません。その点、奈良県フォレスターは、アカデミーを卒業後、基本的に異動はなく、派遣された同じ地域で長期間にわたり働けるように制度設計されています。長期的な視点で計画を立て、一貫性を持って地域の森林を管理することができる奈良県フォレスター制度は理にかなっていると思います。

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実際に森林管理や林業に携わる中で感じている、現場や森林の課題について教えてください。

竹家さん 木材の需要が減っているのもそうですが、林業従事者の不足が課題だと思います。人材不足のため現場の作業や森林管理が追いついていない現状があります。

森本さん アカデミーがあることで竹家さんのように30代から林業へ転職する人や、高校卒業後すぐにアカデミーに入る人もいて、奈良県の林業に携わる人の裾野も広がってきました。アカデミーは林業に携わる人材を継続的に確保できる良いシステムだと思います。
行政の立場で言えば、人材不足もですが、森林所有者の確認、森林の相続の問題も挙げられます。誰が所有者で、どこが土地の境界かわからないことが社会的な課題となっています。所有者がわからないと行政は管理できません。土地の境界問題に取り組んでいくことが森林の適正管理につながると思うので、今は森林所有者を確認するのに必要な基礎的な情報を整えています。

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「持続可能な森づくり」のために必要なことはなんでしょうか。

森本さん 多くの森林所有者が主体性を持って、継続的に山に関わるようになると、森林は持続していくと思います。そのためには、我々行政の支援も含めて、どのような施業ができるかの選択肢があることも重要です。森林に関する情報はどんどん蓄積されているので、森林所有者がこれらを活用して、山をどうしていくかを考え、それに対する付加価値が加われば・・。持続可能性ってすごく難しいんです。地域として個人として未来の山の形を考えていくことが大事だと思います。

竹家さん 森本さんも言われるように、森林所有者の方の山に対する関心が薄いのかと思います。さまざまな人たちが山に関心を持ち、山に入ってくれれば森林は持続していけるのかなと思います。

2023.11.24(更新日)

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今後の展望や夢を教えてください。

竹家さん アカデミー卒業後も、ともに学んだ仲間と何かしら繋がりながら一緒に仕事していければ嬉しいです。みんなでこれからも林業を盛り上げていければと思います。この仕事をしていて楽しいと思う瞬間は、静まり返った山の中をもくもくと自分のペースで遮られることなく、作業に没頭できる時です。山の中は心地よく、自然に向き合いながらも、縛られない感じがします。吉野森林中央組合で働こうと思ったのは、事務作業と山の現場との仕事のバランスが自分にとって丁度良く、働きやすい環境だったからです。アカデミーの後輩にも個人に合った活躍の場を繋げられるように頑張っていきたいと思います。

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森本さん 今年吉野町役場に配属され、まだまだ吉野町すべての山を見切れていないですが、これからたくさんの山を見ていき、吉野町の山に精通して「あいつに相談したらなんとかしてくれるかな」と地域の皆さんに頼られるような存在になれればと思っています。

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何世代にもわたり多くの人の手により維持されてきた森林環境を守り、次世代へ繋げていく役割を担う奈良県フォレスターアカデミーの卒業生たち。
『奈良県フォレスターアカデミー』で学んだ森林に対する豊富な知識と技術を実践で活かし、仲間と連携しながら森林管理に携わる彼らの存在は、森林と人が共生していく未来を切り開いてくれることでしょう。

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<告知>『奈良県フォレスターアカデミー』 令和6年度入学試験(第2回)の出願期間中(〜12/1まで)

現在、奈良県フォレスターアカデミー入学試験(第2回)の出願期間となっています。
1.募集人数:フォレスター学科、森林作業員学科の両学科で5人程度
2.募集日
 (1)出願期間:令和5年10月30日(月)~12月1日(金)
 (2)試験日:令和5年12月9日(土)
 (3)合格発表:令和5年12月18日(月)
※今年度の奈良県職員(森林管理職)の採用試験は終了しています。

以下URLから詳細ご確認ください。
https://nfa.ac.jp/blog/?p=1423

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