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地域に新たな交流を生み、未来をつくる!共創の場づくりとそこに活きる奈良の木(コトクリエ編)

2022.07.25

地域に新たな交流を生み、未来をつくる!共創の場づくりとそこに活きる奈良の木(コトクリエ編)

今回は、地域に密着したコミュニティづくりを精力的に行っている施設について、運営の視点と建築的側面からコミュニティ施設の在り方と奈良の木の魅力を深掘り。前編(β本町橋/三宅町交流まちづくりセンターMiiMo)に続き、後編は、大和ハウスグループみらい価値共創センター コトクリエをご紹介します。

【大和ハウスグループみらい価値共創センター コトクリエ】

地域に新たな交流を生み、未来をつくる!共創の場づくりとそこに活きる奈良の木(コトクリエ編)

大和ハウスグループみらい価値共創センター コトクリエ(以下、コトクリエ)は、住宅から一般建築まで幅広く手がける大和ハウスグループの創業者精神を継承するための施設として、令和3年10月、奈良市内に誕生しました。様々な魅力をもつ本施設ですが、とりわけ特徴的なのは、同企業グループの社員だけでなく、地域や社会にも開かれた施設であるということ。

今回は、そんなコトクリエの立ち上げから現在の運営まで関わっている、大和ハウス工業株式会社理事兼「みらい価値共創センター」センター長・池端正一さん、コトクリエの設計を担当された企画開発設計部 企画デザイン第2グループ 課長・大野潤也さんのお二人に、コトクリエができるまでの経緯や設計する上で意識したこと、奈良の木を使った感想、運営する中での地域との関わりについてお話を伺いました。

地域に新たな交流を生み、未来をつくる!共創の場づくりとそこに活きる奈良の木(コトクリエ編)

――コトクリエはどういった経緯でできたのでしょうか。

池端正一さん 「コトクリエは、創業者精神をしっかりと継承していくための施設を作ろうということからスタートしたプロジェクトです。『世の中の役に立つことを考えよ』という創業者の言葉のとおり、本施設は、世の中の役に立つ人の育成を目的としています」

「また、地域や社会に開かれた施設とする上で、多様な意見を取り入れるため、総勢240名ものプロジェクトメンバーの話し合いにより施設の方向性を決めていきました。ちなみに、愛称『コトクリエ』は古都や物事を意味する“コト”と創造を意味するcreation(クリエーション)を合わせた造語です。若手社員が考え、若手社員の投票で決定しました」

――コトクリエを設計する上で意識したことを教えてください。

大野潤也さん 「コンセプトに『森の会所』を掲げているのですが、ここで言う森とは、森そのものを再現することではなく、動物や植物によって形成される森の生態系のような“豊かさ”を意味しています。そしてもうひとつ、室町時代、身分の違う人たちが集まり車座になって議論した場『会所』の文化を復活できないかと考えました」

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「多くの人が集う場として設計で意識したのは、シームレス(境目がない)で自由度が高く、合理的な施設。例えば、『太陽のホール』は1階部分と2階部分を合わせると500名が利用することができますが、1階と2階で別々のことに使うこともできます。また、壁一面がホワイトボードの部屋では、壁に直接考えを書き込み、どんどんアイデアを広げていくことができます」

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太陽のホール

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池端さん 「当施設の着工前に実施した調査により、奈良時代の下級役人の住宅跡が多く出土し、井戸の跡や器なども発掘されました。また、そこが1300年前、平城京の南端にあたる場所だということもわかったのです。かつて平城京だった土地に建てる施設ということで、この土地の『歴史を感じられること』も意識して建てました」

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発掘調査で出土した井戸の遺構展示

――どんな方が利用されているのですか。

池端さん 「大和ハウスグループの社員研修だけでなく、近郊の学校の教育プログラム、地域向けのイベント(コトクリエDAY)、同業他社を含めた研究会など、様々な年齢・立場の方にご参加いただいています。地域展示コーナーでは、奈良県内で活動される作家さんの作品発表の場としてもご活用いただいています」

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2022.07.25

地域に新たな交流を生み、未来をつくる!共創の場づくりとそこに活きる奈良の木(コトクリエ編)

――施設を訪れた方の反応はどうですか。

池端さん 「ホームページやパンフレットを前もって見ていても、実際訪れるとみなさんとても驚かれます。それから、居心地の良さもとても感じていただいています。極端な例で言うと、近郊の学校のお子さんで、普段は学校が苦手と言う子も、コトクリエの探求学習プログラムには参加する、といったこともあります。居心地の良さという点で、この施設をつくるにあたり目指したのが『何度も訪れたくなる研修施設』なのですが、まさに目指した姿を実現できているのかなと。また、それは総勢240名ものプロジェクトメンバーみんなで考えたからこそできた形なのではないかと感じています」

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――吉野杉をふんだんに使用した『太陽のホール』をはじめとして、コトクリエには奈良の木が使われていますが、その理由を教えていただけますか。

大野さん 「『森の会所』というコンセプトとデザインとしての有機性を表現するにあたり、手段として木を使うことにしました。吉野杉の建材としての魅力は知っていましたが、今回はむしろ『地のもの』を使いたかったので選択しました」

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――実際に奈良の木を使用してみていかがでしたか。

大野さん 「香りが良く木目がきれいで狂いがないという、材としての吉野杉の魅力はもちろんのこと、今回ルーバーに使用した集成材であってもまったく人工的な感じがしないというのは驚きでした。また、通常、木を使うときは意匠的な面から色を統一することが多いのですが、今回は赤身も白身*も両方使用し、下(赤身)から上(白身)へグラデーションになるように配置しました。この模様が山や地層に見えるという方も多く、はからずも太陽のホールにダイナミックな印象を与える要素のひとつになっていると思います」

※木材の中心に近い部分を「赤身」(芯材ともいう)、木材の樹皮に近い部分を「白身」(辺材、白太ともいう)といいます。

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池端さん 「特に、太陽のホールにいらっしゃった方からは、『木の香りも含めてとても落ち着く』『なんだか安心出来る』といったお声をいただくのですが、建材に使われているものが吉野の木であると説明させていただくと、みなさんがぐっと引き込まれて、この施設の良さが一発で伝わるお話が出来るんです。2階部分では実際にルーバーに触れることができるので、訪れた方に触れていただくのですが、吉野杉の手触りにみなさま驚かれます。おそらくこの素材でなければ、ここまでの反応はいただけていなかったと思います。地産の材を使ったことは意匠面とは別にプラスの要素をもたらしてくれていると感じています」

――今後、コトクリエをどういった施設にしていきたいですか。

池端さん 「地域との交流は継続していきたいですね。それからコトクリエから発生したものを増やしていきたい。将来的には、新しい“奈良発祥”創出の場としてコトクリエの認知を広めていけたらと考えています。そのためにも、この施設をしっかりと維持していく、この先もずっと守り続けていくということが一番の課題でもあります。建築のコンセプトがしっかりしているので、何年経っても訪れる方には新鮮であり続けるでしょうし、それを守り続けるのが我々管理する者の仕事ですね」

大野さん 「この建築が子どもたちの原風景になってくれたら、と思っています。誰しも心に残り続ける景色というものがあると思うのですが、コトクリエがそんな場所になってくれたら嬉しいですね。個人的に『太陽のホール』は、人工的ではなくどこか人格を持ったような建築を実現出来ないだろうかという長年考えてきたテーマに出せたひとつの答えでもありますし、空間の持つエネルギーが自由な発想を生むことにつながっているのではと感じています。これからもこの森の会所の成長を見届けていきたいですね」

奈良の木が使用された心地のよい場。そこで生まれる交流や価値が私たちの暮らしを豊かにし、地域の活力にもつながっていく―そんな未来が今回ご紹介した3施設の方々のお話から伺えました。

INFORMATION

大和ハウスグループみらい価値共創センター コトクリエ

住所 〒630-8453 奈良県奈良市西九条町4丁目1-1
URL https://www.daiwahouse.co.jp/kotokurie/index.html

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