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写真家が切り取る。「奈良の木」が私たちの元へ届くまで。〜木が紡ぐ老舗旅館の歴史〜|かつお(仁科勝介)

2021.08.27

写真家が切り取る。「奈良の木」が私たちの元へ届くまで。〜木が紡ぐ老舗旅館の歴史〜|かつお(仁科勝介)

最も古い植林の歴史を持つ、奈良県・吉野地方。“密植”・“多間伐”・“長伐期”という独自の育成方法で、何世代にもわたり大切に育てられた木々は、吉野スギや吉野ヒノキという優良木材として広く知られています。

山から製材所へ、そして工務店や木工職人から私たちの元へ。川上から川下へ「奈良の木」が運ばれていく間には、先人たちが培ってきた知恵や技術がたくさん詰まっています。

そんな歴史ある「奈良の木」の魅力を伝えるシリーズ企画「写真家が切り取る“奈良の木”」。奈良の木が扱われるさまざまな現場を著名な写真家が撮影。奈良の木が大切に扱われている背景と、素材の魅力を写真家の目線で伝えます。

第2弾となる今回の写真家は、第1弾に続いて日本についてもっと知りたいとの想いから、1741ある日本の市区町村すべてを巡り写真に収めたというかつお(仁科勝介)さん。そんなかつおさんの目に「奈良の木」はどのように映ったのでしょうか。

今回訪れたのは奈良県・川上村。
その名の通り、吉野川の最上流にあるこの村は、吉野林業の発祥・中心地として吉野スギ・吉野ヒノキの主産地として発展してきました。また、大迫ダムなど水源地としての役割を果たすために、村として水と森を育てていく取り組みを始めています。

この日は雨上がりで山間だけでなく川底にも霧がかかり、幻想的な姿をみせてくれました。

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今回の目的地はそんな川上村の山あいの集落に建つ、老舗旅館『朝日館』。

標高千数百メートル級の急峻な山々が続く修験道の聖地として知られる吉野大峰山系の入り口に位置し、約140年前から多くの旅人や登山客を迎えてきました。大正時代から続く老舗旅館としての趣を残しつつ、今年の春に全国からお客さんが集まる宿として地元の魅力をアピールするためにと、地元・川上村の材をふんだんに活用してリニューアルされました。

玄関ではドアや天井一面に吉野スギ・吉野ヒノキがあしらわれ、“宿の顔”として上品な雰囲気を演出。新しく設置された食堂では、床やパーテーション、引き戸や窓枠、さらにはワゴンにまで吉野スギ・吉野ヒノキを活用。庭をゆっくり眺めることができる清潔感のある空間に。

また、旅館の顔となる看板もリニューアルにあわせて新たに製作されました。これは、吉野スギの真っ直ぐで緻密な木目の美しさを活かした、黒滝村の「吉野杉の透かし彫り」の技術によって作られたもの。屋号の文字は川上村を拠点に活動する書家・土井一成氏が担当。全体のデザインや製作は下市町の花井慶子さんが行いました。

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さらに館主が地元で活躍されている同世代の作家に刺激を受け、館内のインテリアを地元・吉野地域の作家に依頼。過疎が深刻な川上村を活気づけるために若者が頑張っている姿を村の人にみせようという思いもあるようです。
玄関正面にみえるのはあかり工房 吉野(大淀町)の坂本 尚世さんによる光壁。旅館近くから見える大峰山の山並みの風景を吉野手漉き和紙で表現し、その上側に丸くカットした吉野ヒノキのスライスが山を囲むように貼られています。玄関を入ってすぐのところに設置されているのは、吉野スギで作られた下駄箱。表の引き戸には地元・川上村の商品「吉野杉スリットパネル」が使用されています。スリット加工を施すことによって、空気浄化などの吉野スギの効果が発揮されやすくなるという、まさに地域材を知り尽くしているからこそできた商品です。階段横の袖壁は下市町の面皮細工師・花井 慶子さんによる吉野杉面皮素材の格子。吉野スギの年輪を一枚一枚手作業で剥ぎ取り、編みこみ、自然のツヤと強さを感じることができます。そして、休憩スペースで昔ながらの囲炉裏を囲んでいるのはstudio Jig(川上村)の平井 健太さんによる椅子。吉野スギを薄くスライスした突き板を何層にも重ね、Free form Laminationという曲げ木の技術で成形。滑らかなカーブが美しい作品です。

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2021.08.27

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その他にも館内を見渡すと地元の吉野スギや吉野ヒノキを中心に、いたるところに「奈良の木」が見つかります。年季の入った色合いから、朝日館がこれまで紡いできた歴史を感じるのです。

そんな時代を感じさせる空間に溢れる木の香り。そして、何より館主さんと女将さんの温かな人柄に100年以上も多くの人に愛されてきた理由がありました。

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100年以上の歴史が醸し出す風情と、奈良の木の美しさを存分に感じることができる老舗旅館に訪れた感想を、かつおさんに伺いました。

━川上村・朝日館を撮影して

あたらしくリニューアルされた空間から広がる、吉野スギの香り、心地よさ、なつかしさが忘れられません。そして今昔の吉野スギやヒノキといった奈良県産材に包まれた建物全体は、ひとつのいのちが深呼吸しているようでした。吉野の自然と時間が溶け合った朝日館さんが、僕は大好きです。

かつお(仁科勝介)

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写真家が切り取る写真の数々は、「奈良の木」の新たな一面を見せてくれるはず。「写真家が切り取る“奈良の木”」ぜひ次回もお楽しみに。

INFORMATION

朝日館

朝日館
住所 〒639-3601 奈良県吉野郡川上村柏木154
電話番号 0746-54-0020
HP https://kawakami-asahikan.com/
Instagram https://www.instagram.com/yoshino.kawakami.asahikan/ MAP

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