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東京おもちゃ美術館
子どもは、木のおもちゃに夢を見るーー<br>東京おもちゃ美術館

2017.08.25

子どもは、木のおもちゃに夢を見るーー
東京おもちゃ美術館

新宿区四谷四丁目の路地裏を歩くと、閉校になった小学校の建物から元気な子どもたちの声が聞こえてきました。実はこの施設の一部が、現在は「東京おもちゃ美術館」として運営されており、かつては小学生たちが教科書を広げていた各教室に、世界中のおもちゃがテーマごとに展示されています。来館した親子はそのおもちゃに自由に触れて遊ぶことができるのです。たとえば「ゲームの部屋」には世界のアナログゲームが大集合。「おもちゃのまち きいろ」には知的好奇心を刺激する科学おもちゃが、「おもちゃのまち あか」には日本の伝統的なおもちゃが並びます。どの部屋をのぞいてみても、子どもたちが夢中になって一生懸命遊んでいました。しかし、おもちゃにはいろんな素材を使ったものがありますが、ここにはプラスチックやブリキ、紙などのおもちゃは比較的少なく、「木のおもちゃ」が目につきます。何か理由があるのでしょうか。「最初はとくに木のおもちゃを意識していたわけではないんです。ただ新宿の街中に木で遊べるスペースがあったら面白いんじゃないかと、館内の一角に“おもちゃのもり”をつくったのが始まりですね」と語るのは、副館長を務める馬場さん。「おもちゃのもり」とは、鳥かごをイメージしてつくられた格子状の木の遊具や20,000個以上の木のボールを敷き詰めた「木の砂場」などで遊べる、森の香りが漂うスペース。この「おもちゃのもり」が開館以来大人気となり、馬場さんたちは木と触れる遊び場がこんなにも求められていたのかと驚いたそうです。そこから美術館の方向性をあらため、林野庁と組んで「木育」を推進する美術館へと舵を切りました。

子どもは、木のおもちゃに夢を見るーー<br>東京おもちゃ美術館

すっかり木のおもちゃの魅力に惹きつけられ、週に何度も訪れているという親子も。

精巧さの足りない部分に、自分で想像する、楽しさがある。
それが木のおもちゃの魅力

「木のおもちゃのごっこあそびのコーナーは、かなり人気がありますね。畑に生えている大根も、ホダ木から生えている椎茸もぜんぶ木でできています。子どもたちはこれを収穫しておうち(のスペース)に持ち帰り、コンロで料理をするんです。あ、この穴には、木のいも虫が隠れています。マグネット付きの棒で捕まえられますよ。やってみますか?」。館内に置かれている木のおもちゃは、いずれも発想がユニークで、確かに面白そうでした。しかし、プラスチックなどのおもちゃに比べると、木のおもちゃはどうしてもおおざっぱな形になります。そんなおもちゃがどうして、精巧なおもちゃに慣れたいまの子どもたちの関心を集めるのでしょうか。そんな疑問に対し、馬場さんは「単純だからいいんです」と教えてくださいました。「私たちは木のおもちゃを“面倒見の悪いおもちゃ”と呼んでいます。これらは非常にシンプルな形ですから、子どもたちの方が知恵を働かせて遊ぶ必要がある。ある意味、不親切ですよね。でも、それこそがオモシロさだと思いませんか」と笑う馬場さん。また、木のおもちゃは、「コミュニケーショントイ」という側面も強いともおっしゃいます。見ようによっては、人にも、建物にも、乗物にも見える。だから木のおもちゃは、子どもが大人と一緒に会話しながら、どこまでも世界を広げられるのだとか。単にあたたかみを感じる安心素材というだけでなく、想像力の入り込む余地がたくさん残されているからこそ、子どもは木のおもちゃに魅力を感じるんですね。東京おもちゃ美術館で教わった、親子と木のおもちゃの特別な関係は、これから先の未来もずっと変わらず続いていくのかもしれません。

子どもは、木のおもちゃに夢を見るーー<br>東京おもちゃ美術館

東京おもちゃ美術館は、触れて遊べる体験型のミュージアム。教室や廊下に展示されたおもちゃのほとんどは、実際に手にとって遊べるものばかりです。また、この美術館には200名を超えるボランティアスタッフが「おもちゃ学芸員」として活動しています。10代の学生から80代のシニアの方まで、幅広い年代の方とおもちゃを通して多世代交流が楽しめるところも大きな魅力の一つです。

2017.08.25

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2017.08.25

子どもは、木のおもちゃに夢を見るーー
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2017.08.25

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