2025.10.31(更新日)
三⼾なつめさんと歩く、木のまち吉野を五感で感じた『よしのウッドフェス2025』レポート
今回は、奈良県出身でモデル、タレント、女優として幅広く活躍している三戸なつめさんが、2日目(10月2日)に初参加。ミニツアーやワークショップなどを通じて木の魅力に触れたその様子を、三戸さんの感想とともに紹介します。
木に触れる、木でつくる、木と遊ぶイベント『よしのウッドフェス』
日本を代表する桜の名所として知られている吉野町ですが、魅力はそれだけではありません。美林連なる造林発祥の地として日本遺産にも認定された吉野地域には、森とともに暮す人々の歴史と文化が色濃く残されています。『よしのウッドフェス』は、“木のまち吉野”を知る機会。「木をもっと身近に、もっと自由に楽しむ」ことをテーマに、吉野だからこそできる木のおまつりです。
このイベントを企画・運営しているのは、20〜30代の若手メンバーを中心に、木材関連産業の後継者など吉野町内外の有志が集まって結成された一般社団法人「吉野と暮らす会」。吉野の木にまつわるコトやモノを発信し、木のある暮らしを伝えていく活動を続けています。『よしのウッドフェス』も、2019年3月からスタートし、今年で第4回目となります。
久しぶりに吉野を訪れ、イベント初参加となる三戸さん。
「大人になってからは、初吉野なのでワクワクしています。吉野杉や吉野桧の名前はもちろん知っていて、その歴史が深いことも理解していましたが、木そのものの良さや魅力を深く知りませんでした。とはいえ、小さい頃は奈良市内に住んでいたので、奈良町に行くと町家だったり、インテリアだったり、木の存在は身近にありました。仕事をするようになってからは、ひのきの香りに癒やされたりすることもあります。木を使う製品は好きで、今回、“木のまち吉野”を訪れることを楽しみにしていました」
職人との出会いがあった“⽊のまち吉野”のミニツアー
『よしのウッドフェス2025』は、吉野川にかかる上市橋を渡ってすぐの吉野貯木場をメイン会場に、芝生のある広場で木工品販売や木工体験・ワークショップ、飲食ブース、日替わりイベントを開催。
また巡回バスを用意し、吉野山にある築100年の旅館「坂本屋」を無印良品がリノベーションした「MUJI room SAKAMOTOYA」の見学や、銘木店や製材所など8カ所を気軽に視察できるオープンファクトリーも行われました。
三戸さんは、特別版“⽊のまち吉野”ミニツアーに参加。案内してくれるのは、『よしのウッドフェス』の立役者であり、企画・運営を担当する一般社団法人「吉野と暮らす会」の吉川晃日さんです。
吉野と暮らす会 吉川晃日さん
メイン会場から歩きはじめてすぐに吉野材木橋があり、そこから低山ながら富士山の頭を模した山が見えます。吉川さんから「吉野の富士山です(笑)」という紹介を受けながら、昔ながらの町並みを楽しみつつ進みます。
歩いて数分で到着したのは、「株式会社丸商店」です。1947年創業、天然木化粧貼りの集成材(小さく切った木を貼り合わせて作る、強くて安定した木材)を製造しています。代表取締役の丸充彦さんから、会社の紹介や集成材の強みについてなど説明がありました。
その説明によると、丸商店で扱う集成材は主に内装向け。複数の木を組み合わせて作るため、あらかじめ強度や品質を調整することができ、無垢材(一本の木から切り出した、自然そのままの木材)よりも強度や品質の安定性が確保できることや変形や割れが起こりにくいのが大きなメリットといいます。また、芯材料は外材を使用する場合でも、吉野材の化粧貼り(表面に木目の板を貼って、見た目をきれいにした木材)をすることで、美しい天然木の風合いを楽しめるということです。
「創業時に樽の材料から初めて、そこから柱など建具の製材をされていたそうです。周りに同じような製材所ができると、丸さんのお父さんは『売るのは下手。競争ができない』といって、誰もしていないことをしようと集成材の製造を始めた。今度は集成材業者が増えるとまた『競争はできない』と、変わった形でも対応可能な受注生産の集成材づくりをするようになったと聞いて、なんて柔軟な考え方でしょう!すごく前向きだと思いました。伝統と歴史がある吉野材を扱う方のイメージが変わりました」
次は「吉野中央木材株式会社」へ向かいました。1939年創業の吉野杉・吉野桧を扱う製材所では、日本最古の人工林として500年続く吉野林業の歴史をはじめ、吉野杉と吉野桧の違いについての説明がありました。
「吉野杉と吉野桧の丸太での比較がすごくわかりやすくて。吉野杉の断面に赤い部分と白い部分があることに驚きました。赤身(芯材)と白太(辺材)というそうですが、呼び方も面白い。すでに江戸中期には密植(木を間隔を狭くして植えることで、まっすぐで美しい木に育てる方法)が考え出されていた歴史を知り、目の前にあった丸太の吉野杉は約120年、吉野桧は約180年ということでしたが、年輪が細かくて数えることはできなかったです(笑)。木くずの香りも2種で全く違い、吉野杉は甘い香りが印象的でした」
吉野中央木材株式会社では、建材だけでなく、木桶復活プロジェクトに関わられて木桶材、ギター用の木材、太鼓のバチなど多岐にわたる製材を手掛けています。説明の後は、実際に丸太から木材になるまでの工程を、流れに沿って見学。
製材に入る前には、まず皮むきの工程があります。皮むきには手作業と機械による方法があり、この日は手作業の様子が紹介されました。 現在ではほとんどが機械化されていますが、桧の樹皮を重ねていく日本の伝統的な屋根工法「檜皮葺(ひわだぶき)」の材料となる檜皮をとるために手作業が必要とされる場面もあります。ヘラを皮の隙間に差し込み、一定のリズムで剥がしていく様子は、熟練の技ならではの工程です。
この皮むきを経て、丸太はスライス工程へと進み、製材された木は木目や質感を確認できる状態へと変化していきます。
「丸太から一つひとつの工程を重ねて、職人さんが手を加えた木は、見た目も触り心地も違うということに気づきました。これだけの工程があるなんて、かなり時間と労力がかかるのですね。機械で薄く木皮を削る工程が、カンナと同じように最後にシュッとして終わるというのが、見ていて気持ち良かったです」
そのあとは、最終地となる吉野川沿いにある『吉野杉の家』へ。吉野材を活⽤した施設の特長などをお聞きし、約1時間30分のミニツアーを終えました。
2025.10.31(更新日)
三⼾なつめさんと歩く、木のまち吉野を五感で感じた『よしのウッドフェス2025』レポート
遊びも食も楽しめる、吉野材にふれるメイン会場
メイン会場に戻り、三戸さんは芝生のある広場を散策されました。各ブースで木にふれる体験ができますが、その中でも端材を使った木のバランスブロックに注目。これは、「THE NORTH FACE」などを展開するスポーツメーカー・株式会社ゴールド・ウィンが手掛けるプロジェクト「PLAY EARTH ADVENTURE」のコンテンツです。
ゴールドウインは2020年に環境省と国立公園のオフィシャルパートナーシップを結び、“地球と遊ぶ(PLAY EARTH)”というコンセプトのもと、「PLAY EARTH ADVENTURE」をスタート。遊びを通じて自然とつながる体験を提案しています。
子どもたちがバランスブロックに触れて遊ぶ姿も見られ、三戸さんも「吉野桧の端材でつくるバランスブロックで童心に返って遊べましたし、香りも良くて癒やされました」と話します。
会場では、フードブースやキッチンカーも多数。吉野杉や吉野桧の粉を食べられる状態に加工しあんこに混ぜた、杉餡やきもちを販売する和菓子工房「雀堂」、地元で原木栽培する「新鮮しいたけおかもと」の焼きしいたけなど20以上の出店がありました。
今回、ランチがわりにと三戸さんが選んだのは、「おにぎり専門店南和炊飯処」。
「もともと学校給食のごはんを炊いて各学校へ配送している南和炊飯センターが手掛けるお店で、奈良県産ひのひかりを中心に使ったおいしいご飯を炊き上げるプロによるおにぎりの専門店だそうです。種類も10種以上あって選ぶのに悩みましたが、おかか昆布にしました。東京で、おかかってなかなかなくて、あるとつい選んでしまいます。」
今回『よしのウッドフェス2025』に参加をして、吉野材に関わる人たちの想いや過程に触れ、“木のまち吉野”に特別感がわいたという三戸さんは、最後に「吉野の皆さんは、歴史を大切にされているけど、意外にも思いきりがあって面白い!」と一言。筋の通った考えを持ち、時代の変化を柔軟に受けとめ、未来へつなごうとしていることに感激をされていました。
ほかでは得られない現地での体験は、百聞は一見に如かず。来年のイベント参加はもちろん、吉野へ赴き、自然や歴史、木の文化が息づく空気を感じてみるのはいかがでしょうか。
INFORMATION
よしのウッドフェス2025
| 住所 | 吉野貯木場(奈良県吉野町上市2294) |
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