2023.09.21(更新日)
ギターの“鳴り”は材質で決まる。ギタリスト・関口シンゴ(Ovall)が魅了された吉野スギのギター。
そこで今回は、ギタリストの関ロシンゴさんにこの吉野杉クラシックギターを試奏していただきました。関ロさんは、自身のバンドOvallやソロ名義での活動のほか、あいみょんや藤原さくらのプロデュース、米津玄師のニューアルバム『STRAY SHEEP』での客演など、ジャンルを超えた幅広い活動で知られるアーティスト。ここ数年は自身のSNSやYouTubeで定期的にギター演奏を披露、国内外問わず熱心なフォロワーを着実に増やし続けています。
ギターを選ぶときは、その材質にもこだわるという関口さん。吉野杉クラシックギターの弾き心地はもちろん、材質によるギターサウンドの違いなどについてお伺いしました。
インタビュー:関口シンゴ(Ovall)
――まずは、吉野杉クラシックギターのファーストインプレッションはいかがでしたか?
ケースを開けたときに、スギの木の香りがフワッと漂ってきました。そこでまず気持ちがリラックスしました。そして、この見た目。吉野スギを使っているのはギターの表面板だと思うのですが、びっくりするくらい木目がきめ細かいんですよ。僕が持っているスペイン産のクラシックギターよりも、木目が細かく整然としています。
――吉野スギは「密植」や「間伐を繰り返す」といった独自の育林技術が施されており、何世代にもわたり大切に育てられた木々には「節」がなく、まっすぐで年輪の幅も狭くて均一なものが多いそうです。
やっぱりそうなんですね。クラシックギターのボディの木材にはスギかマツを使うことが多く、マツのパキッとした硬質なサウンドに比べると、スギはもっとまろやかなんです。でも、この吉野スギはまろやかさの中にも「ヌケ感」がしっかりとあって、ボディの鳴りもすごく深い印象です。それは抱えて弾いたときに、胸に伝わってくる振動でも分かります。
――実際の弾き心地はいかがですか?
とてもいいです。ボディは若干小ぶりで、僕が持っているクラシックギターよりも、ひと回り小さくて収まりがいいです。持ちやすい上にちゃんと鳴ってくれる。鳴らないギターって、本当に鳴らないんですよ(笑)。クラシックギターはボディからヘッドに至るまでほぼ木で出来ているので、材質はとても重要なんです。木材のクオリティで音がほぼ決まるといっていい。もちろん、作り手さんの技術も当然影響しますが、根本的な鳴りの深さは変えることができないですからね。
――そもそも、関口さんが材質にこだわるようになったきっかけは?
高校生の頃からお世話になっていた、ギターのリペアマンのおじいちゃんがいて。「ギター界のブラックジャック」と呼ばれていました(笑)。ものすごく辺鄙な掘建て小屋のようなところで作業をされていたのですが、そこに行くと修理待ちのギターがたくさん並んでいるんです。しかも、それがトップ・ジャズ・ギタリストといわれる渡辺香津美さんをはじめ、スピッツやいきものがかりなど錚々たる面々のギターなんです。
――へえ!
その方に僕が高校生の頃からかれこれ20年くらいお世話になっていました。行くたびにいろんな話を聞かせてくださったんです。特に印象的だったのは、「ギターは生き物だ」とおっしゃっていたこと。木なので当然水分が含まれていて、新品のギターはその含有率がすごく高いため「鳴り」も弱いらしいんですよ。その水分が、弾きこんでいくうちに振動でどんどん抜けて、乾燥してくるのだそうです。
――長年、弾きこまれたギターの「鳴り」が良いといわれるのは、ちゃんと理にかなっているんですね。ギターを「育てる」という感覚にもなりますね。
そうなんです。その話を聞いてからは、本当に練習をたくさんするようになりました。この吉野杉クラシックギターはすでに「鳴り」もいいですし、これをどんどん弾きこんでいったら、この先どんなに良い音になるのかとても楽しみですね。「育て甲斐」があります(笑)。
――現在、関ロさんは、YouTubeの番組『Chill Guitar』や、ご自身のInstagramなどで定期的にカヴァー曲など披露されていますが、もしこの吉野杉クラシックギターを演奏するとしたら、どんな曲をカヴァーしますか?
実はもう、このギターで弾いた曲をアップしているんですよ(笑)。“Moon River”と“Don’t know why”をカヴァーしたのですが、やっぱりスタンダードな曲が映えますね。
“Moon River”カバー動画
“Don’t know why”カバー動画
あとは”Over The Rainbow”なんか弾いても良さそうですよね。エレキギターやスチール弦のアコギでは出せない、細かいニュアンスが出せます。ちょっとした爪の繊細さはガットじゃないと出ないし、このボディだからこその繊細さをしっかり響かせてくれると思います。
――そもそもYouTubeの『Chill Guitar』は、どんなきっかけで始めたのですか?
ギター動画をはじめたのが今から3年くらい前で。最初のうちは、「今日はコーヒーを飲みました」みたいな何気ない日常写真を上げていたのですが、「これって、一体誰が喜ぶのかな……?」と疑問が浮かんできて(笑)。イマイチしっくり来なかったんですよね。自分はギタリストだし、ギターの演奏を披露した方が喜んでくれる人もいるかなと思ったのが、今のスタイルになっていくきっかけでしたね。
――反響はいかがでしたか?
動画と一緒にハッシュタグを付けたり、とにかく見よう見まねで続けていたら徐々にアクセスが増えていきました。特に海外のフォロワーが増えたのは驚きでしたね。『Chill Guitar』のフォロワーは10代の子たちも多くて、かなりマニアックなことを知りたがっているんです。ギターの材質もそうですし、弦やペグは何を使っているのか、ブリッジの材質は何か等々(笑)。その気持ちはすごく分かるんです。僕も10代の頃は、ギター雑誌を穴が開くほど読み込みましたからね、このギタリストはどんなギターを使っているんだろう?って。しかも、この動画をきっかけにOvallの活動や、僕のソロ活動を知ってくださる人もいたので、そういう意味でもやって良かったなと思っています。
――関ロさんにとって、ギターの魅力とはなんでしょうか。
なんだろう……。とにかく、いつまで弾いていても全く飽きないんですよ(笑)。実は以前1年ほどクラシックギターを習っていたんですけど、そうするとまた新たな発見があるし、自分のこれまでのプレイスタイルにも大きく影響してくる。新しいギターやエフェクターを買ったときにも、そのワクワク感から新たなアイデアが湧いてきたり、それが次の作品に生かされたりするんですよ。もう無限に楽しめますよね(笑)。
――最後に、この吉野杉クラシックギターをどんな人に勧めたいか教えてもらえますか?
すごく弾きやすいので、初めてギターを手にする人にも向いていると思います。入門者向けの安価なギターだと、どうしてもそれなりの音しか出ないじゃないですか。そうすると、同じ「C」のコードを弾いた時の感動も違う。体に伝わってくる振動や、ボディの「鳴り」をちゃんと感じながら弾くことで、演奏のニュアンスも変わってくると思うんです。何より、弾いてて楽しいですよね。もちろん、上級者にも自信を持ってお勧めします。クラシックはもちろん、ボサノバっぽいのからマリアッチ、スパニッシュまでオールマイティに楽しめるギターですね。
取材後に吉野杉クラシックギターを使って一曲演奏してもらいました。吉野杉クラシックギターのまろやかなサウンドと鳴りを体感してみてください。
Profile
ギタリスト/プロデューサー">関口シンゴ(Ovall)
ギタリスト/プロデューサー
Ovallのギタリストとして、またソロアーティストとして国内外のフェスに出演。ジャズ、ソウル、ロック、ポップスなどを独自のセンスで解釈した音作りが世界中から賞賛される。
プロデューサー/ギタリストとして、あいみょん、矢野顕子、Chara、秦基博、坂本美雨、藤原さくら、さかいゆうなどのライブや作品に参加。
最新シングル「North Wing」が300万回の再生回数超え、またInstagramやYouTubeでほぼ毎日公開中の演奏動画が話題となっている。