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奈良の木とは
2025.12.11(更新日)
11月30日(木)(株)徳田銘木 → 吉野杉の家
12月1日(金)川上村の伐採現場 →(株)丸商店 →(株)櫻井
2日目の朝は、このツアーの目玉となる伐採現場の見学へ。吉野林業発祥の地でもある奈良県吉野郡川上村へ向かいます。吉野町を下り、大滝ダムを過ぎてさらに上流へ、川沿いに続く険しい道を車で40分ほど走ると、伐採の準備をする“山守”、下西さんたちの姿が見えてきました。
“山守”とは、それぞれの山の持ち主である“山主”から山の管理を託され木々を守りながら育てる、吉野林業にとって必要不可欠な存在。山守制度は、江戸時代の中〜後期頃に始まったといわれています。代々の山守が手をかけて守り育てた木を次の世代へと受け継ぐことで、銘木と呼ばれる吉野のスギやヒノキが送り出されてきたのです。
山守(カクキチ木材商店 代表):下西洋三氏
この日、伐採されたのは樹齢約110年、胴回りが2m余り、高さは30mほどにもなる吉野スギ。倒す方向が決められると、危険のない場所へ誘導してもらい、至近距離で伐採の様子を見ることができました。
参加者全員が静かに見守る中、2人の職人が手際良く作業を進行。1人が倒す方向からロープをかけて引き、もう1人がチェーンソーで倒す側の幹の根元を豪快に切り込み、“受け口”をつくります。何度目かの切り込みが幹をえぐるように入ったところで、ロープを引っ張る方向に少しずつ木が傾き、今度は、反対側から勢いよく“追い口”と呼ばれる切り込みを。
木の様子を見ていると、チェーンソーの刃が幹の中程まで進んだかというところでエンジン音が止み、ミシミシっという音が山に響きました。
そして次第にメキメキっと大きな音を立てながら、先程まで見上げていた幹が地面を振るわせ倒れます。それまで静かに一部始終を見つめていた参加者ですが、凄まじい地響きの圧倒的な迫力にどこからともなく拍手が起き、中には感動したのか涙ぐむ人も。
さらにこの後、樹齢約110年の吉野スギの伐採をもう1本見ることができ、伐採したばかりの切株を実際に間近で見て触ることもできました。近付くとスギの香りが漂い、触るとしっとりと手に吸い付くような優しい感触。とても細かく美しい年輪が刻まれています。倒された木は、この後、山で3か月~半年ほど乾燥させて原木の市場へと運ばれるそうです。貴重な瞬間に立ち会えたことに感謝しながら、山を後にしました。
2025.12.11(更新日)
午後は、吉野の製材工場が立ち並ぶ「吉野貯木」と呼ばれる地域へ向かいます。吉野川の中流沿岸にあたるこの地域は、川上の山で伐採された原木が運ばれ材木の市場が開かれる場所。工場の数は最盛期に比べ約半数になったそうですが、今も多くの木材加工業者が集まっています。
今回訪れた「丸商店」は、オーダーに合わせた集成材の製造会社。仕入れが安定している輸入材に、上質な吉野材を薄く加工して貼る“化粧ばり”という技術で、見栄え良くコストパフォーマンスに優れた製品を生産しています。
大型商業施設や寺社仏閣、映像撮影のセットなど用途は多彩。受注生産で、サイズや形はもちろん、表面に貼る“ツキ板”の厚さも0.3~5mmまで注文に合わせて対応しているとのこと。外に貼る吉野材は1つの木材を薄くスライスして使うので、木目の模様が揃ったものを大量につくることができる点も強みだと言います。
株式会社 丸商店 営業課長:丸充彦氏
芯材にツキ板を練付けするプレス機械、ツキ板を薄くスライスする機械など、大規模な設備がある工場のほか、職人が手作業で材の表面を磨いたり、複雑な形状の木製品を作ったりする特殊加工部門も。
機械加工から職人による繊細な手仕事まで、ニーズに合わせて、柔軟に対応できる技術が詰まった工場でした。
INFORMATION
| 住所 | 〒639-3114 奈良県吉野郡吉野町丹治69 |
|---|---|
| 電話 | 0746-32-2301 |
| 詳細はこちら | http://www.marushouten.co.jp/ |
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2025.12.11(更新日)
ツアーの最後に訪れたのは「株式会社 櫻井」。長年集成材を手がけてきましたが、近年は無垢材の生産に力を入れています。そのきっかけは、まだ国内で2か所しか使われてないという“減圧乾燥機”の導入です。
木材を良質な建材として出荷するためには、乾燥という工程が欠かせません。乾燥の方法には、自然に乾かす天然乾燥と機械を使って乾かす人工乾燥の2種類があります。人工乾燥を用いる場合、天然乾燥と比べて短い時間で乾燥させることができますが、高温で乾燥させる従来の方法では、木の油が抜けて本来のツヤや色が損なわれてしまいます。
しかし減圧乾燥機は、機内を低気圧にして水の沸点を下げ、低い温度で木の中の水分を蒸発させることができるというもの。芯まで乾燥させながら、吉野材の魅力である色やツヤ、香りを残したまま、木材に割れが起きないことが利点です。「現時点では最良の乾燥方法」と、櫻井社長は言います。
株式会社 櫻井 代表取締役: 櫻井信孝氏
震災などに耐えられる強い家を望む購買者の声に対して、一本物の吉野材を使ってほしいという思いから、減圧乾燥機で仕上げた無垢材を1本1本、強度と含水率を計測した上で選別して、良質な建材として出荷しています。
見学の最後は、自社の無垢材と集成材の両方を組み合わせた梁が印象的な会議室へ。「完成から半年以上経ってもズレなどが生じていないことが品質の証明」と、自社の仕事に誇りを持って語る櫻井会長のお話も聞くことができました。
株式会社 櫻井 代表取締役会長: 櫻井昭三氏
INFORMATION
| 住所 | 〒639-3114 奈良県吉野郡吉野町丹治15-1 |
|---|---|
| 電話 | 0746-32-0563 |
| 詳細はこちら | https://www.marushou-sakurai.co.jp/ |
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2025.12.11(更新日)
2025.12.11(更新日)