ARCHITECTURE
大型木造建築に、新しい可能性を
五條市上野公園
総合体育館 シダーアリーナ
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最大の特徴は、二段格子状に組まれた屋根。
新たな木造建築プロジェクト
2016年10月、奈良県五條市に、老朽化した中央体育館に代わる新たな総合体育館が誕生しました。単なる建て替えではなく、「林業が盛んな土地ならではの、革新的な木質空間を実現できないか」という着想から建築計画がスタートし、内装だけでなく、構造部分にも積極的に木を用いた全国でも非常に珍しい事例となっています。最大のポイントは、アリーナの屋根構造です。一般的には鉄骨を用いるこの部分に可能な限り木材を利用して屋根の軽量化を図り、地震に強い建物にすること、さらにはその屋根を大きなサイズの材料ではなく、普通の住宅に用いられるサイズの材料を用いて実現することを目指し、木を二段に格子状に組み立て、対角線状の鉄骨ブレース材を補強する形で屋根をつくる設計方法が取り入れられました。材料の規格を住宅用とすることにこだわった理由は、材料の調達を容易にすることで、地域の木材を使った木造建築を広めたいという想いからです。
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2,600本の奈良の木と匠の技を
注ぎ込んだ、地域の誇り
完成した体育館は、延べ床面積5,031㎡で1,700人を収容可能。大空間を実現するために奈良県産のスギ・ヒノキなどが2,600本も用いられ、構造的にも意匠的にも優れた技術が存分に注ぎ込まれました。法的に求められる耐火性能を実現するために、アリーナ棟は耐火性能設計と階避難検証法によって一般集成材を使い、下屋棟は大断面構造用集成材の表面に石膏ボードを被覆して、さらに集成材表面材で化粧をほどこしたメンブレン型(国土交通省認定)の耐火構造が用いられており、まさに地域の力が結集された建物といえるでしょう。オープン後は地域のスポーツ大会などの会場として多くの市民に親しまれている一方、その建築技術をひと目みたいという方々が全国から訪れており、新たな木造建築のショールームとしての役割も果たしています。今後も体育施設としてだけでなく、新たな木造建築技術の発信基地となっていくことが期待されています。
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VOICE FROM
地域を活性化させる「地材地匠」の拠点を
〔基本構想・設計監修担当 杉本洋文(東海大学工学部建築学科 教授)〕
「地材地匠」、この言葉がまさしく今回のプロジェクトのコンセプトを表現しています。この体育館は木を寄せ、技を寄せ、人を寄せ、地域を活性化させる循環をつくる拠点となります。そのために特殊部材を用いず、汎用性にもこだわりました。どこでも、いつでも手に入れられる素材を用いることによって地域の産業の育成にも結びつけていきたいと考えています。
INFORMATION
五條市上野公園総合体育館 シダーアリーナ
ADDRESS
奈良県五條市上野町246