ARCHITECTURE
日本を象徴するスタジアムに息づく奈良の誇り
国立競技場
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
周辺の自然と調和する
「杜のスタジアム」
56年の歴史に幕を閉じ、新しい国立競技場が2019年11月30日に完成しました。本施設は、建築家・隈研吾らが設計に携わり、「杜のスタジアム」というコンセプトの下、明治神宮外苑や新宿御苑といった周辺の豊かな環境との調和が図られています。
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
観客を包み込む国産木材を利用した
大屋根と軒庇
「杜のスタジアム」のコンセプトの一つの顕れとして、国立競技場には、日本全国の木材がふんだんに使用されています。
外観デザインを特徴付けている外周の軒庇(のきびさし)には、47都道府県から調達した木材(46都道府県はスギ、沖縄県はリュウキュウマツ)が使用されており、それぞれの産地の方位に応じてスタジアムの全周に配置されています。もちろん、この中には奈良の木も。スギの縦格子で覆われた軒庇がつくる柔らかな陰影がスタジアムを周囲の木々に溶け込ませ、柔らかなスギの質感が訪れる人々を温かく迎え入れます。
日本全国の木材を使用することで、国立競技場を訪れた人が、自らの生まれ育った地域に思いを馳せたり、日本の自然の豊かさや多様性を感じたりすることのできるスタジアムとなっています。また、森林認証された持続可能な森から軒庇の木材を調達することで、地球環境の保全の必要性を発信し、持続的な循環社会に向けたきっかけづくりとしています。
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
大屋根のトラスには、鉄と木を組み合わせた部材(トラスの下弦材:国産カラマツの集成材、ラチス材:国産スギの集成材)を採用し、すべての観客席から木の温もりが感じられます。
日本を代表する施設に日本全国から調達する国産材を積極的に用いることで林業・木材産業の活性化、公共建築における木材普及へのイメージ作りへ貢献したいという思いが込められているそうです。
Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
VIPエントランス(柱に吉野杉シートを使用) Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
国内外の賓客をもてなす空間に
活用されている奈良の木
ふんだんに日本の木材が使用されている国立競技場ですが、その中でも奈良県産材は、軒庇の他に、国内外から訪れる大切なお客様をおもてなしするVIP、VVIP用のエントランスやラウンジの内装にも用いられています。
大和張りなど日本の伝統的な意匠に加え、高級和室に用いられることも多い、節がなく美しい色艶をもつ吉野杉を用いることで、より国内外の賓客をおもてなしするのにふさわしい上品で上質な和の空間に仕上がっています。
VIPラウンジ(天井ルーバーに吉野杉シートを使用) Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
VVIPエントランス (大和張り船底天井に吉野杉シートを使用) Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
VVIPラウンジ(大和張り船底天井に吉野杉シート、 柱の小端立に吉野杉の無垢材を使用) Copyright : JAPAN SPORT COUNCIL.
世界に誇れる日本らしいスタジアムとして
国産材の魅力発信を期待
完成して以来、多くのスポーツ競技大会やイベントで活用されている国立競技場。これからも世界に誇れる日本らしいスタジアムとして、国内外の多くの方へ向けて、日本の木材、そして奈良の木の魅力を伝えてくれることでしょう。
INFORMATION
国立競技場
ADDRESS
東京都新宿区霞ヶ丘町10-1写真提供
独立行政法人日本スポーツ振興センター参考文献
独立行政法人日本スポーツ振興センターホームページ及び「国立競技場について」- 新建築2022 3月号別冊「JAPAN NATIONAL STADIUM 国立競技場」