2023.09.22(更新日)
古都の伝統と現代の匠の技が出逢う場所。新たなホテル『ふふ 奈良』の魅力とは?
レポート:Kobamiho
土地の香りと、土地の記憶。
知らない土地に訪れた時、いつもと違う香りがどこからともなく漂い、初めて味わう空気が胸いっぱいに広がる。そんな瞬間に、旅の高揚感を感じることがあります。“土地の香り”というのは、その場所の風土や空気感を無意識のうちに感じさせてくれるように思います。
今回、「奈良の木」を使った空間の魅力を体験するべく、リゾートホテル『ふふ 奈良』へ。ホテルを訪れる前に、「奈良の木」として代表的な吉野スギや吉野ヒノキを取り扱う製材所『吉田製材』へと足を運びました。
製材現場で目にした吉野スギ。耐久性が高く節が少なく艶があり、時の権力者たちから重宝されてきた。
私が訪れたのは、吉野林業が行われる吉野地方に近接するエリア。この地域には古くから数多くの製材所などがあり、吉野の木に関わる仕事を生業とした人々が暮らしてきました。土地に降り立つと、新鮮な木の香りがふわっと鼻腔をくすぐります。まるで木造の新築のおうちに遊びにきたかのように、心地よい香りに包まれました。吉野林業は独自の育成方法と恵まれた自然条件により、美しく耐久性にも優れた良質な木が育ち、古くは『大坂城』や『伏見城』をはじめ、畿内の神社仏閣にも吉野の木が使われてきたそう。豊かな土地の環境から、今から500年程前に日本で初めてスギやヒノキの植林が行われた場所でもあります。
「奈良の木」の香りは、はるか昔から木と寄り添って暮らしてきた、500年の土地の記憶を感じさせてくれました。
土地の”匠”と出逢う場所。ホテルが伝える、奈良の意匠。
“匠の木”に抱かれる心地よさを感じて。
ほのかな木の香り、手や足に触れる素材の優しさ。木を使った空間に不思議と心地よさを感じてしまうのは、日本人としての性でしょうか。自然な木目のゆらぎに、無機質でないぬくもりを感じるのが、木で作られたものの魅力だと思います。
今回訪れた『ふふ 奈良』では、昔ながらの奈良の職人さんの技を間近で見て体感できるようになっているのですが、実は「奈良の木」も、自然と人とが生み出した、“匠の木”なのです。
ホテルの各所で使われているのは、吉野地方で作られた、吉野スギ。木目が緊密で、節が少なく艶があり、強度も高いという特長を持ちます。このような良質な木が生まれる理由は、“密植”という方法で長期間育成を行う育て方にあります。“密植”とは、たくさん植えて何度も木を間引くこと。
一見、簡単そうに聞こえますが、これを何世代にもわたり数百年かけて行う、文字通り気が遠くなるような作業でとてつもない時間を要します。たとえ、自分が植えた木が使われるところを見ることができなくても、何十年何百年先のことを考え、受け継ぎ育て続けます。
ホテルに到着すると、吉野スギが使われた大和張りの外壁が印象的なエントランスが、ゲストを出迎えます。外装は、“墨色”という絶妙な色合いで仕上げられており、これは奈良が墨造りとゆかりが深かったというルーツから着想されたもの。館内も、墨色を基調とした品の良い暗さが落ち着きと優雅さを醸し、ホテルのイメージカラーにもなっています。
ウェルカムドリンクは、木目模様が芸術的な奈良の木で作られたトレイに乗せられて提供される
建築基本デザインは建築家 隈研吾氏が手掛けており、長い年月をかけて育てられた奈良の“匠の木”と、現代の“匠”がホテルで出逢い、融合した空間に。いにしえの景観が継承され、今を生きる職人たちの手によって、わたしたちに自然な形で奈良の歴史と物語を語りかけてくれます。
オリエンタルなお部屋で、和漢の香りが旅の疲れを癒す
約4000坪という広大な敷地に30室の客室を備え、全室温泉付きのスイートルームのラグジュアリーリゾート『ふふ 奈良』。贅沢に作られたホテルの客室は、奈良の巡礼の歴史、そして、東洋と西洋の文化が入り交じる文化を体現したお部屋になっています。
わたしが訪れた客室は「ふふラグジュアリープレミアムスイート」。日本古来の「座する」をテーマにデザインされており、掘り込み式のリビングが特徴です。
ソファの下には畳が敷かれ、座ってくつろげるようになっていて、巡礼で歩き疲れた足を色々な座り方で開放し、リラックスできる空間に。シルクロードにゆかりがあることから、オリエンタルな雰囲気も感じられるトーンになっていて、和と洋が融合したエキゾチックさも漂います。
もう一つ、特徴的なテーマが「香り」です。お部屋の扉を開けると、華やかで香ばしい木の香りが出迎えてくれます。客室には、奈良の風土や歴史からヒントを得て作られたホテルオリジナルの香りから、土地の魅力を味わう工夫が随所にちりばめられています。
奈良の土で作られた香台と吉野スギの角材に、奈良をイメージして作られたオリジナルアロマオイル「WOOD SMOKE」の香りが。
部屋付の天然温泉露天風呂では、“和漢の香りの湯”の香り袋を入れて、お庭を眺めながら入浴を愉しめます。奈良は昔から漢方にゆかりがある地域で、この土地ならではの“大和当帰“の葉やシナモンなど、季節に合わせてブレンドされた香り袋が用意されています。和の植物の爽やかな香りに包まれながらお湯に浸かるのは、まさに至福のひととき。古くからの知恵と伝統が、現代のわたしたちの心と身体に、癒やしと安らぎを与えてくれます。
2023.09.22(更新日)
古都の伝統と現代の匠の技が出逢う場所。新たなホテル『ふふ 奈良』の魅力とは?
庭屋一如の空間の中で、建築美と自然美に抱かれる
光の陰影が、内と外との境界を曖昧に
館内を歩いていると、中庭の木々の影がホテルの廊下に落ち、美しく揺れていることに気が付きました。
屋外と屋内の境目が曖昧で、建物の中にいながらも光の陰影が自然との一体感を感じさせてくれる……。それもそのはず、『ふふ 奈良』は「庭屋一如のリゾート」をコンセプトに「庭と建物は一つの如し」という考え方のもと、庭と建物とが絶妙に調和した空間が作られています。
茶室の復元から垣間見える、継承され混ざり合う美意識
名勝奈良公園の一角に立地する『ふふ 奈良』本館とレストラン『滴翠(てきすい)』の間には、庭園『瑜伽山園地(ゆうがやまえんち)』があります。 元々、この場所には明治期から大正期にかけて大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛の別荘があり、様々な芸術家や文化人たちが庭園や茶室を訪れ、交流を図った史実が残っているそう。自然に溶け込むように復元された『茶室』は、元来、庭と建物を一体として暮らしの空間を作ってきた日本人の精神を、現代に思い起こさせてくれる佇まいです。
庭園は一般開放、茶室は予約制で利用が可能。
この『茶室』にもまた、美しい吉野スギのムク材がふんだんに使用されています。先人達が見出した土地の魅力と、現代の職人の美意識が混ざり合った建築は、気持ちが静まり、思わず姿勢をただし、周りの景色と向き合う時を過ごしたくなる場所でした。
土地の文化からインスピレーションを得て表現する、奈良の味覚。
ホテルに併設される『日本料理 滴翠(てきすい)』では、奈良の伝統野菜である大和野菜や地産の食材を使ったコース料理を愉しめます。和薬発祥の地というルーツから、和ハーブをふんだんに使った創作和食が魅力です。
この時期に提供されていたのは、「大和牛の五徳味噌焼き」。温めた石の上に柿の葉や“大和当帰葉”などを燻し大和牛に和ハーブの香り付けをします。器から立ちのぼる煙は香り高く、その芳香を和牛がまとい、一層味わい深く仕上がります。古来より続く和薬の文化が、現代の料理人の手でアップデートされ新しい奈良の味覚が発見されていく瞬間に、新しい滋味の扉が開いていくのを感じました。
これからのラグジュアリー。それは、その土地と丁寧に向き合うこと。
ホテルに使われている奈良の木や、奈良の古き良きものに触れる。その土地の起源を探り、それらが今のわたしたちの暮らしに、どのように繋がっているのかを解釈し、想いを巡らせる。そんな風に、時代の連続性を感じながら過ごす時間は、私にとって限りなく豊かな時間に思えます。
その土地のものを、丁寧に味わうこと。先人たちが大切にしてきたものに想いを重ね、自分なりに価値を見出すこと。
そんな贅沢なひとときを過ごすことが、これからのラグジュアリーのスタンダードになっていく、そんな予感がします。
PROFILE
Kobamiho/小林 未歩
1992年生まれ、神奈川県出身。新卒でクックパッド株式会社に入社する。その後、食品の製造・加工・販売、及び飲食店の経営をしている、株式会社スマイルズへ転職。食にまつわる2つの会社を経て、現在は株式会社 温故知新の社長室で、ホテルの企画プランナー・プロデュース業務を担当。並行して、フリーランスとして地方の観光コンテンツのプロデュースやライターも行う。さまざまなホテルや地方に訪れ、SNSでその地域の魅力やストーリーを発信中。
Instagram:https://www.instagram.com/kobamiho52c/
Twitter:https://twitter.com/kobamiho52c
INFORMATION
奈良公園 瑜伽山園地
住所 | 〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1184-1 |
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電話番号 | 【奈良県奈良公園事務所】 0742-22-0375 【庭園および茶室に関するお問い合わせ】 0742-22-5911(吉城園/受付時間9:00~17:00) |
HP | http://www.pref.nara.jp/39911.htm |
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